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授業NO.026「ぼくの街、わたしの町」

授業No.026
授 業:「ぼくの街、わたしの町」
対 象:愛媛県西条市こどもの国
日 時:2009年2月22日
2008年度最後の授業は、愛媛県西条市こどもの国で行ないました。対象は2~6年生30名で、講師は日本画家の北村さゆり氏(1988年院日本画修了)。 「洛中洛外図」の「西条市こどもの国」版の屏風絵を、皆で協力して制作します。子ども達は、「1.絵の具にしたい土や砂を探して、片手一握り分くらい持ってくる」、「2.心に残った風景や出来事を絵日記に描いてくる」という宿題が出されていました。さてどんな屏風絵が完成したでしょうか?
講 師:北村さゆり(日本画家)

2009.2.22 sun. 09:20~09:40
「制作・屏風について」(レクチャー)
創作室の壁に、白い部分と黄色、黒に塗られた部分があるパネル6枚が立てかけられています。白の間に建物が描き加えられています。白いところは雲です。黄色いところ、黒いところは雲の合間です。つまり、雲形が描かれていました。黄色は、園芸材料でもある鹿沼土を砕いてふるいにかけ薄く塗り、黒は、墨汁を塗っています。

最初のレクチャーで、絵を描くことは、普段の生活をよく観察することが大切だというお話がありました。織田信長が上杉謙信に贈った「洛中洛外図」屏風には、雲の合間から京都の寺社、御所、お屋敷、人々の様子が詳しく描かれています。そしてイギリスの作家アンソニー・グリーンは、変形したキャンバスに日常風景を描く画家です。四角い紙に描くのだけが絵ではないことも紹介してくれました。

9:40~10:30
「絵の具をつくろう」
北村講師が普段使っている砂の絵の具について、ウエマツ画材店よりお借りした緑青(ろくしょう)の色見本のパネルで教えてくれました。砂の絵の具は光の屈折によって粒子が細かくなるほど白っぽく薄い色に見えます。 触ってみると、「さらさら」と「ざらざら」でわかります。そして砂の絵の具の使い方を実践してくれました。

その後、子ども達は持ってきた砂・土を乾燥させて、ふるいにかけました。用意してきた鹿沼土、テラコッタ、軽石の絵の具材料をお手本に作業をしました。

10:40~13:30
「絵画制作」
5人1グループで1枚のパネルを担当しました。持って来た絵日記や、雲の形から連想したものを描きました。

絵を描く場所は、ざらざらしていたり、黒かったり、しばし戸惑っている様子でしたが、パネルの上に乗って、雲の合間に足を置き、制作を始めました。
自分でふるいにかけた砂や土にアクアグルー(定着材)を指で溶き、絵の具として使いました。

北村講師が調合をしてくれた鹿沼土・軽石・テラコッタ・三原色(赤・青・黄)の水溶性濃縮顔料にアクアグルー(定着材)を混ぜた「絵の具」は、配布所から欲しい分をパレットにもらいました。

昼食休憩をはさみながら、自分の作品を完成させました。

13:45~14:00
「北村講師の作品紹介」
北村講師は普段、どんな絵を描き、どんなことを考えながら作品を制作しているのでしょうか?綺麗な色の砂の絵の具のことや、いつから絵を描いているのかなど、子ども達から質問が出ました。

その間に、6枚のパネルは卒業生のご協力で連結され、屏風に仕立てられました。広げられると、5メートル以上の大きさになりました。その場に居合わせた人たちから驚きの声が挙がりました。

14:00~15:00
「鑑賞講評会」
ひとりひとり屏風の前で、作品を紹介しました。北村講師はそれぞれの作品の良いところを、丁寧に教えてくれました。その後、自分の作品を指差して記念撮影をしました。

■おわりに
北村講師から、砂の絵の具の材料である緑青(マラカイト)の欠片と、缶バッチを一人づつに手渡され、授業は終了いたしました。子ども達は絵について、多くのことを知ることができました。そして最後まで集中して、全員でやり遂げることができました。
終了後、「ぼくの街、わたしの町」と題された屏風は、西条市こどもの国の展示室で展示され、後日、雲の部分からカットし、子ども達へ返却をする予定です。
今回、四国地方在住の卒業生はじめ多くの方のご協力を得て、実施することができました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。

講師 北村さゆり(日本画家)

「土から美術品?!」

大きな屏風絵を、自分の持ってきた土も使って描く。作業の初っぱなは、土がフルイからおりないという想定外のアクシデントで始まりました。
あらかじめサブロクサイズの画面6枚に、雲の形を、天から見下ろしたように、描いておきました。雲の隙間は30人分。地と図が逆転してみえたりもします。自分の絵を描く雲の隙間は、四角くないし、白くない。戸惑っていた子ども達は、塗った土が乾き始めると気持がノってきました。5人が1枚の画面に向かい、出来上がった6枚を蝶番で繋ぎ合わせ、屏風になったとき、さっきまで床に置いて描いていた絵が、立ち上がったのです。
“思い込みや既成の価値観をぶち破る”。この「大義名分」を語らずして授業を始め、最後の「まとめ」も、あえて(・・・)しませんでした。それで良かったと思っています。体験して、感じてほしかったからです。ただの土で絵を描いて美術品になるかもしれない時に立ち会った彼らの体験が、感じ、刺激し、育っていくのなら、それがいいのです。
短時間で何か伝えられるのか?という不安はありましたが、私の希望に叶った、授業という「箱」作りに関わった全ての皆さんに感謝します。
そして、何と言っても、今回の授業を「形」にした主役達・30名の児童が、初体験の私にとっては援軍となりました。
ありがとう!