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授業NO.041「五重奏を描こう」

授業No.041
授 業:「五重奏を描こう」
対 象:埼玉県坂戸市立南小学校6年生38名
日 時:2012年3月9日
41回目の授業は、埼玉県坂戸市立南小学校にて、6年生38名を対象に行いました。講師は、キギのアートディレクター植原亮輔氏(1997年染織デザイン専攻卒)と渡邉良重氏、作曲家の阿部海太郎氏です。
今回の授業では、授業では五重奏の5つの楽器を各パートごとに順番に聴いて、音のイメージや感じたことを5種類の紙(じゃばらに折ったレシート、ノート、はがき、単語帳、紙コースター)に描きました。5種類の絵は五重奏のCDと一緒にオリジナルボックスに入れて1つの作品としてパッケージされます。
音がもたらすイメージのひろがりと、ひとつ1つのイメージがすべて合わさることによって生まれる表現の魅力を、「視覚」と「聴覚」を往復する製作から体感しました。
講 師: 植原亮輔 氏(1997年 染織デザイン専攻卒/キギアートディレクター) 渡邉良重 氏 、阿部 海太郎 氏(作曲家)

2012.3.9 fri. 08:45~ 09:30
講師作品紹介・課題説明・デモンストレーション(音楽室)
最初に植原さんと渡邉さんが作品紹介をしました。ソーサーの模様がカップに映りこむ器や、描かれた模様が水を入れると大きく見えるコップ、半透明の紙に絵を描いた絵本など、斬新なアイデアに溢れた素敵な作品が次々に紹介されました。
次は阿部さんです。音楽家には作曲家と演奏家がおり、作曲家は演奏できない楽器も音をイメージして曲をつくるそうです。そして阿部さん自身が作曲された「ホテルの時間はかく流れし」という曲を演奏しました。音楽室に響き渡る美しいメロディーに、皆おもわず聴き入ってしまいました。

次は課題の説明です。五重奏は5つの楽器のパートからできており、授業ではパートをひとつずつ聴きながら、絵を描きます。描く紙はパートごとに違い、それぞれの楽器の音や形態から講師がイメージした形の紙が用意されました。描画材は色鉛筆、カラーペンの他、クレヨン、グラファイト(鉛筆の形をした黒鉛)、スタンプ、5色の丸シールと児童が持参した筆記用具です。
「オリジナルのCDジャケットをつくる」というような感覚で考えるとよいそうです。
5種類の音から絵を描いていくのは、先生曰く「1人駅伝」のように根気が必要とのこと、気合いをいれてスタートです!

まずは音を聴いて描く練習をしました。音の高低、強弱、長さ、リズムなどから、イメージや感じたことを色や形などをつかって紙に描いていきます。最初は戸惑ったり、恥ずかしくて遠慮がちだった児童も、続けるうちに少し、リラックスしてきました。

09:40~10:40 (2時間目)
10:50~11:35 (3時間目)
11:50~12:30 (4時間目)

音を描く(音楽室)
いよいよ本番、最初はアコーディオンです。
楽器の形をイメージさせるじゃばら折りのレシートを使います。1曲が長いため、4分割し、順番に聴いていきます。色の線を重ねてメロディーを表したり、音を強く感じた所にシールを貼ったりと、ひとり1人工夫をこらした絵が出来上がっていきます。描き方に悩んだり迷ったりする児童が多いのでは・・という心配は、取り越し苦労に終りました。

続いてコントラバスです。
コントラバスはオーケストラで使われる一番大きな弦楽器です。四角く大きな形をイメージする、ポストカードを使って描きます。1枚ずつバラバラでもよいし、2枚つなげて描いてもOK。縦横の向きも音にあわせて自分で選びます。曲が流れると、どっしりとした低い音に、「モヤモヤしてる」「どんよりしている」という声があがり、中には指先にインクをつけて紙にこすり、モヤのような煙のような絵を描いている児童もいました。大きな丸をたくさん描いたり、黒や茶色で重たさを表現している児童もいて、アイデアの豊かさに驚かされます。

友達のユニークな描き方に「なるほど!」と刺激をもらう風景も多く見られました。
渡邉さん、植原さん、阿部さんも積極的に児童のテーブルをまわり、声をかけます。

トロンボーンでは、スライド管を動かすと楽器の形が伸び縮みするように、閉じた時と開いた時で大きさが変わるノートを使います。ページをめくるごとに話が展開していくものや、ページからページへと模様がつながっているものなど紙の形がうまく絵に活かされています。同じパターンの描き方になってしまったり、描き方に迷った児童は、友達の絵を見に行ったり、見せ合ったりしながら、次のアイデアを考えます。

ピアノは阿部さんが生演奏しました。CDと生演奏とでは、音や響きが違います。紙は鍵盤をイメージさせる単語帳を使い、1枚ずつ、あるいは紙を全部ひろげ円の形にしてから描きました。

最後はシンバルやドラムを組み合わせたパーカッションです。ドラムをイメージさせる丸いコースターに描きます。シールを切ったり重ねたり、鉛筆やペンを限定した組み合わせにしたりと、描画材の扱いにも随分慣れてきたようです。

撮影は大変です。シャッターチャンスを逃がさないようグループ全員でカウントダウンをしながらタイミングを計ります。
そしてボールばかりか,中には人がジャンプするグループもありました。
講師もひとつ1つのグループをめぐり、全身をつかってアドバイスをしました。
文字づくりを重ねるほど、目指す完成度も高まっていきます。それだけに、納得いく写真が撮れると,あちらこちらで拍手がおこりました。

午前中をつかい、5つの絵が完成しました。音を聴き、絵を描くのには集中力が必要です。用意された全ての紙に描くとなんと56枚の絵を描いた事になります。繰り返し製作する中で、イメージやアイデアがどんどん広がることもあれば、途中から同じようなパターンになってしまうこともあり、児童は自分との戦いだったようです。思わず「つかれた~」という声もとびだしました。皆さん、お疲れさまでした!!

13:50~14:35
発表会(体育館)
発表会は6年生の児童だけでなく、他の学年の児童、保護者など総勢300人近くが集まりました。できあがった絵は作品箱にいれ、体育館の前に並べました。植原さん、渡邉さん、阿部さんがそれぞれの視点で選んだ作品を拡大鏡で映しながら、紹介しました。色の美しさや形や組み合わせの面白さ、規則的な模様から自由に描いた絵まで、さまざまな作品が映しだされます。作品をよく見ると、ひとりずつ5種類の絵に何かしらの共通点があり、その人らしい世界がひろがっています。どの作品も、今にも音が聞こえてきそうです。

発表会が終ると思った時に、天井の照明が消え、体育館が暗くなりました。そして、舞台のライトが点灯すると、なんと、譜面台と共に、楽器をもった演奏者が現れました。思いがけない演出に児童はざわめきます。帽子をかぶった阿部さんがピアノに座り、燕尾服と蝶ネクタイに着替えた植原さんが指揮棒を持って現れました。深々と礼をした後に始まったのは、サプライズで準備していた五重奏の生演奏です!何度も繰り返し聴いたパートごとの音が、すべてあわさる瞬間です。音が体育館一杯に広がっていくのを身体で感じます。

曲が終り、大きな拍手の後、演奏者と楽器の紹介がありました。楽器ごとのパート曲と、その楽器ならではの有名な楽曲の一部が演奏されました。児童のアンコールに答えて、五重奏がもう一度演奏されて演奏会は終了しました。最後に三人の講師からまとめのお話がありました。

まとめ
「音を聴いたり絵を描いた今日の授業は、図工と音楽をあわせたような授業だったけれど、きっと何か発見できたのではないかと思います。また何年かしたら箱をあけて、今日のことを思い出してください。」(植原さん)
「最初は快調で描いていたのが、途中、アイデアがなくなって苦しんだり、それに耐える姿がまさにアーティストをみているようでした。ぼくたちも特別な才能があるからすぐできてしまうのではないかと思われたりするのですが、そんなことはありません。苦しい時間に耐えながら、作品をうみだしています。この授業でこうした経験をする機会ができたのがとてもよかったのではないかと感じています」(阿部さん)
「アイデアに苦しんだりすることもあったけれど、苦労して作ったものには喜びがあります。これからもつくることを続けてください。」(渡邉さん)

■おわりに
授業の実施にあたり、坂戸市立南小学校の太田正久校長先生、金田伸夫教頭先生(’77油画卒業)、6年生担任の拝藤能史先生、音楽の屋木祥子先生、岩崎裕介先生をはじめとする先生方と職員の皆様に、多大なご理解とご協力をいただきました。

講師 植原亮輔 氏(1997年 染織デザイン専攻卒/キギアートディレクター)
ワークショップを‘9th MARCH QUINTET’(3月9日 五重奏)というタイトルにしたのは、「その日に行なったクリエイションの記録」という意味合いを込めているからです。 突然聞かされ、指定の用紙に用意された画材や道具で表現するという即興とも言える作業を子供たちに強いるこのワークショップは、アイデア力、瞬発力、決断力、など動物的感覚で描くクリエイションと言っても良いのかもしれない。
その日、その時、身体で感じながら描いた音の絵画が、子どもたちが今後大人になった時、箱を開けてそれが何かしらの「気づき」を与えてくれるものになれたら、僕はとても嬉しいです。